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大阪高等裁判所 昭和59年(行コ)17号 判決

京都市右京区嵯峨広沢西裏町七番地七

控訴人

福田稔こと 丁海雲

右訴訟代理人弁護士

高田良爾

渡辺哲司

京都市下京区間之町五条下ル

被控訴人

下京税務署長

今福三郎

右指定代理人

高田敏明

足立孝和

岸本幸章

藤原和彦

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一申立て

一  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が昭和四六年三月一二日付で控訴人に対してした昭和四二年分所得税更正処分のうち総所得金額九四万六二び「その他の費用」率の平均値は一三・一四パーセントと三五・六九パーセントであるのに対し、山砂利採取対象地を新規に取得した昭和四八年と同四九年については、雇人費率はそれぞれ一五・〇九パーセントと一四・二四パーセント、「そって取り消された後のもの、以下昭和四二年分ないし昭和四四年分の更正処分を「本件処分」といい、各更正処分をそれぞれ「昭和四二年分処分」、「昭和四三年分処分」、「昭和四四年分処分」という。)のうち、昭和四三年分処分については総所得金額が一一五万〇九五〇円、所得税額が六万三二〇〇円を超える部分、昭和四四年分処分については総所得金額が二一五万五五一五円、所得税額が二四万六〇〇〇円を超える部分をいずれも取り消す。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  控訴の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二主張及び証拠

次のとおり付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるからそれを引用する(但し、原判決添付別表三の二の売上先76番の「(長島工務店)」を「(永島工務店)」に訂正する。)。

(控訴人)

一  原判決は事実の認定及び法律の適用を誤っている。特に、原判決は昭和四二年分の雇人費を算出するに当って昭和四四年分の雇人費率を適用し、又、昭和四二年及び同四三年分の「その他の費用」を算出するに当って昭和四四年分の「その他の費用」率を適用しているが、それらはいずれも誤りである。すなわち、控訴人は昭和三九年ころから借地である京都府城陽市大字奈島小字下小路一一番一、四、五において山砂利採取業に従事し、昭和四二年から山砂利採取対象地として自己の所有地を取得して右業務を継続してきたところ、昭和四二、三年は山砂利採取のための樹木伐採、表土除去や沈澱池掘削などの準備作業を要した時代であって、それらに関する出費は直接売上げにつながらないものである。したがって、昭和四二、三年分の雇人費及び「その他の費用」の各率は昭和四四年分のそれらの各率を上回るものであった。このことは山砂利採取業自体に由来する現象であって、控訴人の個人的企業を株式会社京都福田として法人化した昭和四七年以降における各年分の雇人費率及び「その他の費用」率(昭和四七年分から同五三年分までの間における各年分の雇人費率及び「その他の費用」率の平均値は一三・一四パーセントと三五・六九パーセントであるのに対し、山砂利採取対象地を新規に取得した昭和四八年と同四九年については、雇人費率はそれぞれ一五・〇九パーセントと一四・二四パーセント、「その他の費用」率はそれぞれ四〇・三五パーセントと四六・九〇パーセントである。)にも明確に表れている。原判決は右の実情を無視して前記のような雇人費及び「その他の費用」の各率を適用している。

二  当審における証人一川満男

(被控訴人)

控訴人の前記一項の主張を争う。控訴人の昭和四二年ないし同四四年分の事業内容はほぼ同じものであったから、昭和四二年分の雇人費を算出するに当って昭和四四年分の雇人費率を適用し、又、昭和四二年及び同四三年分の「その他の費用」を算出するに当って昭和四四年分の「その他の費用」率を適用することには合理性がある。

控訴人は昭和四二、三年の事業内容が昭和四四年のそれと異なるから、右のような雇人費及び「その他の費用」の各率の適用は不当であると主張しながら、各年分の雇人費及び「その他の費用」の各率の数値を具体的に述べておらず、右主張は根拠に乏しいものである。

理由

一  当裁判所も控訴人の本訴請求をいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正などするほか、原判決理由説示のとおりであるから、それを引用する。

1  原判決一一枚目表の三行目の次に、行をかえて、「そして、弁論の全趣旨によると、原告はいわゆる白色申告者であることが認められる。」と加える。

2  同一六枚目表の三行目の「乙第二二号証」の次に、「第二四号証の一ないし一二、」をそう入する。

3  同裏の一〇行目から最後の行にかけて「被告主張(別表七)のとおり八八六一万二二〇九円」とあるのを、「後記訂正後の別表七のとおり八九四八万五二二九円」と訂正する。

4  原判決一七枚目裏の最初の行の「二七・三六パーセント」の次に、「(但し、それは被告主張の傭車料率であって、正しくは二七・六三パーセントである。)」とそう入する。

5  同一八枚目表の二行目の「四〇九七万八七一六円」を「四一三八万三一一一円」に、三行目の「六六二〇八八五七円」を「六六八六万二二三四円」にそれぞれ訂正する。

6  同慮の四行目の「帳簿の写であることが、」の次に、「前記乙第二四号証の一、」をそう入し、同行の「当裁判所が」を「文書の方式及び趣旨により」に訂正する。

7  原判決一九枚目裏の二行目の「三九七四万八四九〇円」を「三九三四万四〇九五円」に、三行目の「六一九〇万三四六五円」を「六一二五万〇〇八八円」に、四行目の「五八五七万三五一二円」を「五七七〇万〇四九二円」に、同二〇枚目表の五行目から次行にかけて「被告主張の金額になる」を「次のとおりになる」に、七行目の「三九二九万三三七〇円」を「三八八八万八九七五円」に、八行目の「六一四二万六七五七円」を「六〇七七万三三八〇円」に、九行目の「五七九八万三二七一円」を「五七一一万〇二五一円」にそれぞれ訂正する。

8  原判決添付の別表五の二の基本給等欄の「乙第19号証」を「乙第20号証」に訂正する。別表六の「ヘドロ流し止め」欄の昭和四四年分に「(2)」を加え、「トラックタイプロープ」欄の取得価額の「7,568,837」を「7,568,887」に訂正する。別表七の差引主張額欄の六月の「7,882,202」を「8,404,202」に、七ないし一〇月の各月欄にそれぞれ「7,384,348」とあるのをいずれも「7,457,103」に、計欄の「88,612,209」を「89,485,229」に、備考欄の注5ないし8の「59,074,817」を「59,656,817」に、「7,384,348」を「7,457,103」にそれぞれ訂正する。別表七の別紙〈2〉の一枚目の山本建材の六月欄に「582,000」を加え、小計欄の「5,966,202」を「6,548,202」に、二枚目の六月欄のNo.1小計の「5,966,202」を「6,548,202」に、合計の「7,822,202」を「8,404,202」に、総計欄の「59,074,817」を「59,656,817」にそれぞれ訂正する。別表八の上欄の「計算書」の次に「(乙第24号証の1~12)」を、注の「差引」の次に「い」をそれぞれそう入する。

9  控訴人は、山砂利採取対象地を新規に取得した時には、売上げにつながらない準備作業を要するところ、昭和四二、三年は丁度そのような時代であったから、昭和四二年分の雇人費を算出するに当って、昭和四四年分の雇人費率を適用し、又、昭和四二年及び同四三年分の「その他の費用」を算出するに当って、昭和四四年分の「その他の費用」率を適用することは、不適当であると主張する。

しかしながら、右の雇人費率及び「その他の費用」率を適用して昭和四二年及び同四三年分の雇人費もしくは「その他の費用」を推計すべきであることは原判決説示のとおりであり、なお、原告が山砂利採取対象地として、昭和四二年までに六七七一平方メートルを取得し、同年中に六万八三七〇平方メートルを取得し、昭和四三年中に六九一七平方メートルを取得しているが、昭和四四年にも四万四八二一平方メートルというかなりの土地を取得していることや、昭和四二年分処分において認定された事業所得は一七九八万三四一三円で、同年分の事業収入金額一億四九七七万六〇〇七円に対する比率は約一割二分であるところ、原告が昭和四二年から同四四年にかけて、山砂利採取対象地の所有を拡大し、かつ砂利採取設備、作業用機械や車両を新規に取得するなど、事業規模を順調に発展させていた状況に照らして、右の事業所得率はなんら不自然でないことに徴するとき、昭和四四年分の雇人費率及び「その他の費用」率などをそのまま適用して、昭和四二年分の雇人費及び「その他の費用」を推計することに多少問題があるとしても、原判決主文に影響を与えるべき程度のものでないと認められるし、又、右の「その他の費用」率を適用して昭和四三年分の「その他の費用」を推計することにつき特にそれを妨げるべき事由は見当らない。当審における証人一川満男の証言によっても以上の判断を覆すことはできない。

二  よって、原判決は正当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山忍 裁判官 高山健三 裁判官 河田貢)

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